トップページ研究室紹介(基礎医学領域)神経科学(協力) 神経情報薬理学(薬理学)

神経科学(協力)

神経情報薬理学(薬理学)

研究室概要

生体内で細胞は、細胞内外の情報を受け取り、隣り合う細胞や細胞外の基質と接着することで、特有の形態を呈し極性を獲得している。これらの過程は細胞が臓器や組織で特有の機能を発揮するために必須であり、生命活動の根本とも言える。これらの過程に異常が生じると循環器疾患、癌、神経・精神疾患など多様な疾患が引き起こされる。すなわち、細胞形態、運動、接着、極性の制御機構を解明することは、生物の基本的な成り立ちを明らかにするだけでなく、様々な疾患の原因や治療法を確立する上で欠くことができない。我々の研究室では、細胞の形態、運動、接着、極性の分子機構を解明することにより、精神・神経疾患や循環器疾患の病態を細胞レベルから解き明かすことを目標にしている。

独自HPへのリンク

教員

構成員名/英名表記 役職 所属
貝淵 弘三/KAIBUCHI Kozo
詳しくはこちら→
教授神経情報薬理学
天野 睦紀/AMANO Mutsuki
詳しくはこちら→
准教授神経情報薬理学
黒田啓介/KURODA Keisuke
助教神経情報薬理学
中牟田信一/NAKAMUTA Shinichi
助教神経情報薬理学
坪井 大輔/TSUBOI Daisuke
詳しくはこちら→
助教神経情報薬理学
中内さくら/NAKAUCHI Sakura
助教神経情報薬理学
西岡 朋生/NISHIOKA Tomoki
詳しくはこちら→
助教神経情報薬理学

研究キーワード

細胞極性 細胞運動 細胞接着 動脈硬化 統合失調症 シグナル伝達 低分子量Gタンパク質

研究分野紹介

細胞形態を制御する分子機構の解析

生体内で細胞は、細胞内外の情報を受け取り、隣り合う細胞や細胞外の基質と接着することで、特有の形態を呈し極性を獲得している。これらの過程は、細胞が臓器や組織で特有の機能を発揮するために必須であり、生命活動の根本とも言える。これらの過程に異常が生じると循環器疾患、癌、神経・精神疾患など多様な疾患が引き起こされる。すなわち、細胞形態、運動、接着、極性の制御機構を解明することは、様々な疾患の治療法を確立する上で欠くことができない。我々の研究室では、低分子量G蛋白質Rhoファミリーが細胞の形態変化、運動能、接着能、極性形成に重要な役割を担っていることを見出し、その活性制御機構や作用機序を解明することを目標としている。Rac、Cdc42、Rhoを始めとするRhoファミリーは、活性型と不活性型をサイクルすることにより細胞内で分子スイッチとして機能している。Rhoファミリーの活性は、数種の活性制御因子により厳密に制御されている。活性型のRhoファミリーは、特異的な標的蛋白質を介して多様な生理機能を発揮する。我々の研究室では生化学的手法によりRhoファミリーの標的蛋白質を多数同定し、分子生物学や細胞生物学的手法を用いてその生理機能を解析している。現在、Cdc42の標的蛋白質Par6、Cdc42とRac1の標的蛋白質IQGAP、RhoAの標的蛋白質 Rho―キナーゼとミオシンホスファターゼのミオシン結合サブユニットを主に研究対象としている。我々の研究により、Rhoファミリーによる極性形成、細胞骨格の再構築による形態変化、細胞接着の再配置、細胞運動を制御する分子機構が明らかになりつつある。例えば、Rho―キナーゼは、平滑筋収縮に代表されるように収縮力の発生に必須で、細胞運動に寄与することを見出している。IQGAP1は上皮細胞において細胞間接着を制御し、上皮細胞の極性を維持している。また、運動している細胞でIQGAP1は、細胞骨格を制御することで極性形成や運動能に関与することを明らかにしている。一方で、Rhoファミリーの活性制御因子に着目し、Rhoファミリーの活性制御機構の解明を目指すと共に、その疾患との関連を解析している。これらRhoファミリーを中心とした解析により細胞形態を制御する分子機構を紐解き、精神神経疾患、循環器疾患や癌などの疾患に対する治療法の礎を築きたいと考えている。

神経細胞の極性・回路形成

 極性形成神経細胞は脳内において複雑なネットワークを形成するが、その基本機能は信号を受け取り統合して他の細胞に伝えることである。そのため、神経細胞は分化の過程で、通常一本の軸索と複数の樹状突起を形成し、樹状突起から信号を入力して軸索から信号を出力するという極性を獲得する。しかし、神経細胞の極性がいかにして形成されるのかは長らく不明であった。我々は、細胞がどのようにしてこのような「極性」を確立するか、その分子メカニズムの解明を目指している。現在までに、CRMP-2という蛋白質が軸索に濃縮し、その形成に関わることを見出した。さらに,CRMP-2を過剰に発現すると複数の軸索が形成されること、CRMP-2が神経細胞の極性形成に必要であることも明らかにした。これらの研究成果をふまえ、我々は、1)神経細胞の極性形成時における CRMP-2およびその結合蛋白質の作用機構の解明、2)極性形成に関与する分子の探索、3)軸索・樹状突起の運命決定を担う細胞外シグナルの同定を目的として研究を行っている。また、4)神経細胞の極性維持の分子メカニズムや、5)軸索再生におけるCRMP-2の作用についても解析する。

脳神経系は極めて精巧な神経回路網を有する。最近、神経回路網の形成を担う様々な細胞外神経軸索ガイダンス因子が同定されてきた。それら細胞外シグナルの下流でどのような分子メカニズムが存在し神経細胞の形態を制御しているのかは不明な点が多い。これらの分子メカニズムの解明は脳神経回路の形成機構の解明へとつながり、神経の軸索再生や移植医療にも貢献する可能性が高い。以前我々は神経回路網形成を制御する細胞外因子依存的に活性化するRhoキナーゼの新規脳内標的蛋白質としてCRMP-2を同定した。そして、CRMP-2はそれ自身で神経軸索の形成を促進するが、一方でCRMP-2がRhoキナーゼによりリン酸化されると神経軸索の退縮を引き起こすことを証明した。本研究では神経回路形成におけるリン酸化蛋白質としてのCRMP-2の機能解析とキナーゼによるCRMP-2の時間的空間的機能修飾を解明することを目的としている。本研究は脳神経系の形成の初期過程に焦点をあてており、脳がいかにして高次機能を獲得するか分子レベルで解明するとともに、神経軸索再生の道が開かれることが期待される。

動脈硬化性疾患の病態解明と治療法の開発

狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、高血圧などの動脈硬化性疾患は我が国の死因の大きな部分を占め、これら疾患には血管の異常収縮や炎症性の細胞の遊走が深く関わっていることが知られている。我々は、この血管の異常収縮や細胞の遊走に、低分子量GTP結合蛋白質 Rhoとそのエフェクター分子Rho-kinaseが重要な役割を果たしていること、また上記の疾患モデルにRho-kinaseの阻害剤が有効であることを明らかにしてきた。自然発症高血圧ラット(SHR)においてもRhoの活性が亢進しており、これらの病態においてはRho/Rho-kinaseシグナル系の異常な活性亢進が起こっていると推定されている。その分子基盤を解析することで疾患発症のメカニズムの一端が明らかなるものと考えている。最近、 Rho-kinase阻害剤は平滑筋細胞、内皮細胞、マクロファージの細胞遊走を抑制するが、繊維芽細胞や上皮細胞の遊走は阻害しないことを見出した。また、細胞遊走の様式によってもその影響が異なることを見出した。平滑筋細胞やマクロファージの遊走は動脈硬化形成過程に重要な役割を果たすと考えられており、特にこの過程にRho-kinaseが関わっていると考えられる。現在、Rho-kinase阻害剤の動脈硬化性疾患に対する有用性が世界的に注目されているが、その開発の歴史は浅い。我々はヒトに経口投与可能な新規 Rho-kinase阻害薬を開発する事を目標としている。また、動脈硬化性疾患においてRhoシグナル伝達系分子が疾患の原因遺伝子や感受性遺伝子となっている可能性が高いと考え、遺伝学的な解析も行っている。

大学院生募集

詳細はこちら

研究業績

主要論文

A proteomic approach for comprehensively screening substrates of protein kinases such as Rho-kinase.
Amano M, Tsumura Y, Taki K, Harada H, Mori K, Nishioka T, Kato K, Suzuki, T, Nishioka Y, Iwamatsu A, Kaibuchi K.
PLoS One., 5, e8704, 2010

 

Cadherin-mediated Intercellular Adhesion and Signaling Cascades Involving Small GTPases.
Watanabe T, Sato K, Kaibuchi K.
Cold Spring Harb Perspect Biol., 1, a003020, 2009

 

Phosphorylation of CLASP2 by GSK-3beta regulates its interaction with IQGAP1, EB1 and microtubules
Watanabe T, Noritake J, Kakeno M, Matsui T, Harada T, Wang S, Itoh N, Sato K, Matsuzawa K, Iwamatsu A, Galjart N, Kaibuchi K.
J Cell Sci., 122, 2969-79, 2009

 

Anterograde Transport of TrkB in Axons Is Mediated by Direct Interaction with Slp1 and Rab27
Arimura N, Kimura T, Nakamuta S, Taya S, Funahashi Y, Hattori A, Shimada A, Menager C, Kawabata S, Fujii K, Iwamatsu A, Segal RA, Fukuda M, Kaibuchi K
Developmental Cell, Vol 16, 675-686, 2009

 

Rho-kinase contributes to sustained RhoA activation through phosphorylation of p190A RhoGAP
Mori K, Amano M, Takefuji M, Kato K, Morita Y, Nishioka T, Matsuura Y, Murohara T, Kaibuchi K
J Biol Chem., 284(8):5067-5076, 2009

 

Rho-Kinase Phosphorylates PAR-3 and Disrupts PAR Complex Formation.
Nakayama M, Goto TM, Sugimoto M, Nishimura T, Shinagawa T, Ohno S, Amano M, Kaibuchi K.
Developmental Cell, Vol 14, 205-215, 2008

 

Numb Controls Integrin Endocytosis for Directional Cell Migration with aPKC and PAR-3.
Nishimura T, Kaibuchi K.
Developmental Cell, Vol 13, 15-28, 2007

 

Neuronal polarity: from extracellular signals to intracellular mechanisms.
Arimura N, Kaibuchi K.
Nature Rev Neurosci., 8(3):194-205, 2007

 

IQGAP3, a novel effector of Rac1 and Cdc42, regulates neurite outgrowth.
Wang S, Watanabe T, Noritake J, Fukata M, Yoshimura T, Itoh N, Harada T, Nakagawa M, Matsuura Y, Arimura N, Kaibuchi K.
J Cell Sci., 120(Pt 4):567-577, 2007

 

DISC1 Regulates the Transport of the NUDEL/LIS1/14-3-3 Complex through Kinesin-1.
Taya S, Shinoda T, Tsuboi D, Asaki J, Nagai K, Hikita T, Kuroda S,Kuroda K, Shimizu M, Hirotsune S, Iwamatsu A, Kaibuchi K.
J. Neurosci., 27(1):15-26, 2007

 

DISC1 regulates neurotrophin-induced axon elongation via interaction with Grb2.
Shinoda T, Taya S, Tsuboi D, Hikita T, Matsuzawa R, Kuroda S, Iwamatsu A, Kaibuchi K.
J Neurosci., 27(1):4-14, 2007

 

Role of Numb in Dendritic Spine Development with a Cdc42 GEF Intersectin and EphB2.
Nishimura T, Yamaguchi T, Tokunaga A, Hara A, Hamaguchi T, Kato K, Iwamatsu A, Okano H, and Kaibuchi K.
Mol Biol Cell., Mar;17(3):1273-1285, 2006

 

Key regulators in neuronal polarity.
Arimura N, and Kaibuchi K.
Neuron, Dec 22;48(6):881-884, 2005

 

Phosphorylation by Rho kinase regulates CRMP-2 activity in growth cones.
Arimura N, Menager C, Kawano Y, Yoshimura T, Kawabata S, Hattori A, Fukata Y, Amano M, Goshima Y, Inagaki M, Morone N, Usukura J, and Kaibuchi K.
Mol Cell Biol., Nov;25(22):9973-9984, 2005

 

CRMP-2 is involved in kinesin-1-dependent transport of the Sra-1/WAVE1 complex and axon formation.
Kawano Y, Yoshimura T, Tsuboi D, Kawabata S, Kaneko-Kawano T, Shirataki H, Takenawa T, and Kaibuchi K.
Mol Cell Biol., Nov;25(22):9920-9935, 2005

 

PAR-6-PAR-3 mediates Cdc42-induced Rac activation through the Rac GEFs STEF/Tiam1
Nishimura T, Yamaguchi T, Kato K, Yoshizawa M, Nabeshima Y, Ohno S, Hoshino M, and Kaibuchi K
Nature Cell Biol., 7(3):270-277, 2005

 

GSK-3β Regulates Phosphorylation of CRMP-2 and Neuronal Polarity
Yoshimura T, Kawano Y, Arimura N, Kawabata S, Kikuchi A, and Kaibuchi K.
Cell, Vol 120, 137-149, 14 January 2005

 

Interaction with IQGAP1 Links APC to Rac1, Cdc42, and Actin Filaments during Cell Polarization and Migration.
Watanabe T, Wang S, Noritake J, Sato K, Fukata M, Takefuji M, Nakagawa M, Izumi N, Akiyama T, Kaibuchi K.
Dev Cell., 7(6):871-883, 2004

 

Role of the PAR-3-KIF3 complex in the establishment of neuronal polarity.
Nishimura T, Kato K, Yamaguchi T, Fukata Y, Ohno S, Kaibuchi K.
Nature Cell Biol., 6(4):328-334, 2004

 

Positive role of IQGAP1, an effector of Rac1, in actin-meshwork formation at sites of cell-cell contact.
Noritake J, Fukata M, Sato K, Nakagawa M, Watanabe T, Izumi N, Wang S, Fukata Y, Kaibuchi K.
Mol Biol Cell., 15(3):1065-1076, 2004

 

Roles of Rho-family GTPases in cell polarisation and directional migration.
Fukata M, Nakagawa M, Kaibuchi K.
Curr Opin Cell Biol., Oct; 15(5): 590-597, 2003

 

CRMP-2 regulates polarized Numb-mediated endocytosis for axon growth.
Nishimura T, Fukata Y, Kato K, Yamaguchi T, Matsuura Y, Kamiguchi H, Kaibuchi K.
Nature Cell Biology, 5(9):819-826, 2003

 

CRMP-2 binds to tubulin heterodimers to promote microtubule assembly.
Fukata Y, Itoh TJ, Kimura T, Menager C, Nishimura T, Shiromizu T, Watanabe H, Inagaki N, Iwamatsu A, Hotani H, Kaibuchi K.
Nature Cell Biology, volume 4 issue 8, 583-591, August, 2002

 

Rac1 and Cdc42 Capture Microtubules through IQGAP1 and CLIP-170
Masaki Fukata, Takashi Watanabe, Jun Noritake, Masato Nakagawa, Masaki Yamaga, Shinya Kuroda, Yoshiharu Matsuura, Akihiro Iwamatsu, Franck Perez, and Kozo Kaibuchi
Cell, Vol 109, 873-885, June 2002

 

The GEX-2 and GEX-3 proteins are required for tissue morphogenesis and cell migrations in C. elegans.
Martha C. Soto, Hiroshi Qadota, Katsuhisa Kasuya, Makiko Inoue, Daisuke Tsuboi, Craig C. Mello, and Kozo Kaibuchi

Genes & Development, Vol. 16, No. 5, 620-632, March 1, 2002

 

Direct interaction of insulin-like growth factor-1 receptor with leukemia-associated RhoGEF
Shinichiro Taya, Naoyuki Inagaki, Hiroaki Sengiku, Hiroshi Makino, Akihiro Iwamatsu, Itaru Urakawa, Kenji Nagao, Shiro Kataoka and Kozo Kaibuchi
The Journal of Cell Biology, Volume 155, Number 5, Nov 26, 809-820, 2001

 

Rho-family GTPases in cadherin-mediated cell-cell adhesion.
Fukata M, Kaibuchi K.
Nature Reviews Molecular Cell Biology, 2, 887 -897, 2001

その他の論文リストはこちら