トップページ研究室紹介(統合医薬学領域)臨床医薬学 医療薬学((病)薬剤部)

臨床医薬学

医療薬学((病)薬剤部)

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研究室概要

 医療薬学研究室は、医療現場のニーズに沿った薬学的研究を目的とする研究室です。現在では、ほぼ全ての薬科大学・薬学部に、“医療薬学講座”が設置されていますが、「医療薬学」という言葉が薬系大学においてすら目新しかった昭和59年に本学医療薬学研究室は設置されました。以来、薬学部を持たない名古屋大学では唯一、薬物と生体との相互作用を研究する場として非常に重要な位置を占め、我が国の医療薬学研究の先導を担えるよう薬剤部職員と一丸となって精進してきました。医療薬学研究室には博士課程大学院生、留学生、Post Doctoral Fellow、研究生が所属し、他大学の医療薬学コースの修士課程の大学院生も受け入れています。
 当研究室の主な研究テーマは、(1)記憶や情動の分子基盤の解明と統合失調やアルツハイマー病などの神経精神疾患の分子病態の解明、および(2)患者様のQOLの改善とファーマシューティケルケアの向上を目指した医療薬学研究です。

教員

構成員名/英名表記 役職 所属
山田清文/YAMADA KIYOFUMI
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教授医療薬学
永井 拓/NAGAI TAKU
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准教授医療薬学
伊藤 教道/ITOH NORIMICHI
特任助教医療薬学

研究キーワード

神経精神薬理学、医療薬学、学習・記憶、統合失調症、薬物依存、アルツハイマー病、イメージング

研究プロジェクト

記憶の分子基盤の解明

 過去の出来事や経験の獲得から起こる行動の変化は学習として表れ、情報の保持と想起は記憶として評価されます。学習・記憶は人間の知的活動の中で最も重要な要素であり、神経変性疾患や精神疾患の多くでは学習・記憶機能が障害されます。私たちは記憶の長期固定には脳の前頭前皮質におけるドパミンD1受容体の刺激と下流に存在するextracellular signal-regulated kinase 1/2(ERK1/2)の活性化を介した新規タンパク合成が重要であることを見つけました。
 また、低用量のメタンフェタミンをマウスに反復投与し、メタンフェタミン休薬後も長期間にわたり記憶障害を呈するメタンフェタミン誘発性記憶障害モデルを作製しました。この記憶障害の分子機序としてメタンフェタミンの連続投与によるドパミンD1受容体/ERK1/2の機能不全が関与していることを示しました。さらに、ERK1/2の活性化は空間作業記憶にも重要な役割を果たしていることも明らかにしました。
 現在、意思決定の脳内機構を解明するための実験系の確立に取り組んでいます。

統合失調症などの精神疾患の分子病態と治療薬の開発に関する研究

統合失調症は重篤な精神障害を呈する精神疾患です。統合失調症にneuregulin-1、dysbindin、disrupted-in-schizophrenia 1(DISC1)など遺伝的因子が強く関与することが実証されています。また、統合失調症は遺伝因子と出生の季節や場所、社会経済状況、母体感染などの環境因子が相互に組み合わさって発症に至る複雑精神疾患であると考えられています。我々は、新生仔期に異常免疫応答を誘発する合成ポリヌクレオチドpolyriboinosine:polyribocytidylic acid (polyI:C)を投与した成獣マウスでは、統合失調症様の異常行動およびグルタミン酸作動性神経系の障害が認められることを明らかにしました。また、新生仔の変異型DISC1遺伝子改変(DN-DISC1)マウスにpolyI:Cを投与し、統合失調症における遺伝-環境相互作用モデル動物を新たに作製しました。私たちは、CRESTのメンバーとして神経情報薬理学分野および精神医学分野と連携して研究を行っています。

アルツハイマー病の原因解明および治療薬の開発に関する研究

高齢化社会を迎えアルツハイマー型痴呆の患者は年々増加していています。現在、我が国ではドネペジルというアセチルコリンエステラーゼ阻害薬のみがアルツハイマー病治療薬として承認、臨床使用されています。 私たちの研究室では、アルツハイマー病患者脳で観察されるアミロイドβ蛋白を用いることによってアルツハイマー型痴呆のモデル動物を作成し、記憶障害のメカニズムについて研究を行っています。関連した研究として、閉経後の認知障害モデルを開発し、そのメカニズムの解明と予防・治療に関する研究も行なっています。

薬物依存に関する研究

覚せい剤や麻薬の乱用により薬物依存に陥ったり、統合失調症に類似した精神障害が惹起されます。特に最近では、乱用者の若年齢化が大きな社会問題にもなっています。私たちの研究室では薬物依存の動物モデルを作製し、その分子機構について遺伝子レベルで解析を進めています。これまでに、腫瘍壊死因子(TNF-α)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、マトリックメタロプロテアーゼ(MMP)などが薬物依存の形成に重要な役割を果たしていることを世界に先駆けて明らかにしてきました。

脳特異的転写調節因子に関する研究

脳発達期における発育環境は精神疾患発症の要因の一つと考えられています。これまでに当研究室では、幼若期から長期隔離飼育を施したマウスにおいて、海馬歯状回における神経新生および学習記憶が障害されることを報告しました。また、隔離飼育により海馬歯状回における転写調節因子Npas4およびNurr1 mRNA発現量が低下することも見いだしました。これらの遺伝子は、ともに未成熟神経細胞の分化や発達に関与することが知られているため、神経発達におけるこれら転写調節因子の役割について解析を進めています。

インビボ脳機能イメージングに関する研究

脳は、数千億個に及ぶ神経細胞とそれを取り囲むグリア細胞から構成されています。学習・記憶などの高次脳機能にはこれらの細胞の緊密なコミュニケーションが必須であり、細胞内カルシウムの時空間的動態が非常に重要な働きをすることが知られています。近年では細胞に蛍光プローブを導入したイメージングが日常的に行われ、細胞が機能を果たす際に変動する細胞内の遊離カルシウムイオン濃度の動態をリアルタイムに測定できることが可能となりました。細胞内の遊離カルシウムイオン濃度の動態を観察することは、細胞の反応を捉える上で必要不可欠な技術です。しかし、多くの研究は培養細胞やスライス標本を試料とした実験系であり、高次脳機能を反映するカルシウム動態を捉える事は困難です。現在、生体脳におけるカルシウム動態を測定することで学習・記憶、情動性、不安などの精神機能における神経活動をリアルタイムに可視化する試みを行っています。

医療薬学的研究

各診療科と共同で、患者のQOLの改善とファーマシューティケルケアの向上を目指し、医療薬学の見地から基礎および臨床研究を行っています。例えば、薬物相互作用による血中濃度の変化のメカニズムに関する動物実験や薬の効果あるいは副作用の個人差と遺伝子多型やエピジェネティクスとの関連性を探究する臨床研究などです。

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