トップページ研究室紹介(臨床医学領域)脳神経病態制御学 精神医学/精神生物学

脳神経病態制御学

精神医学/精神生物学

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研究科の詳細については、独自ウェブサイトをご覧ください。

当「精神科ユニット」の構成について

「精神科ユニット」は,診療部門が「精神科」と「親と子どもの心療部(児童精神科)」,大学院研究部門が「精神医学」,「精神生物学」,「発達・老年精神学」,「親と子どもの心療学」,「精神医療学(寄附講座)」の各部門に分かれており,全ての科長,部門長を尾崎紀夫が(精神医療学については入谷修司が)担当しております.精神科ユニットの各診療科,各研究分野は診療・教育・研究面で,「子どもから老年まで」,「心から脳・身体,ゲノムから社会」まで広範な精神医学的問題に対応することを目指して作られております.

 

例えば,産後によく起こる産後のうつ病はお母さん自身の問題であると同時に,お子さんの心の発達にも関係し,お母さんを支えるご家族の問題でもあります.また,かつての精神医学は「心か?脳か?」,「遺伝か?環境か?」といった発想で進められていましたが,今では,「心と脳」,「遺伝と環境」の相互関係を踏まえ,全体を捉えることが,臨床面でも研究面でも必要になっております.

 

この様な状況を踏まえ,各診療科,各研究分野は各々の専門性を大事にしつつ臨床・教育・研究面で協力しあって,全体が「精神科ユニット」して活動しております.以下,「精神科ユニット」としての方向性について紹介させていただきます.

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社会的なニーズを踏まえた「精神科ユニット」の方向性

近年,「こころ」の問題は社会の一大関心事となり,精神医学に対する期待と要請は高まっています.この精神医学に対する社会的要請の高まりを裏付ける以下の様な事実も明らかになっております.1) 多くの精神障害の発症頻度は高いが,しかるべき医療的対応を受けていない患者も多く,その結果自殺や長期休務等の大きな社会的損失がもたらされている.2) 身体疾患患者は精神障害を合併する頻度が高く,精神医学的介入が身体患者のQOLの向上,ひいてはその疾患自体の予後のために有用である.

したがって,当「精神科ユニット」で行う臨床・教育・研究は,この社会的なニーズに応えるべく努力することが最も重要と考えています.とりわけ重視している臨床上の基本理念は「患者の生物・心理・社会的側面に配慮し,実証的データと患者・家族のニーズに基づく精神医療の実践」です.この基本理念に沿い,研究は「日々の臨床が新たな実証的データを作成する」ことを目指し,教育は「臨床と研究の成果と方向性を伝え,ひろめる」ことを目標にしております.

大学院教育と直結する研究において,「日々の精神科臨床の中で生じる課題に関する実証的なデータを明らかにする」と同時に,「現在の治療法では十分な効果が得られない難治例が少なからずある」こと,「精神障害について十分な理解が得られていないために生じる誤解や偏見で苦しんでいる人々がいる」ことを意識する必要があります.したがって,ゲノム医学や神経科学など諸科学の知見と心理社会的・環境因子を加味した研究により,「精神障害の病態生理を解明する」ことが,我々に課せられた重要な研究課題です.その結果,「病態生理に基づいた治療・予防法の開発」と,「精神障害のわからなさに起因する誤解や偏見」の解消に繋げるため,一層力を注いでいきたいと思っております.

以上,述べました当「精神科ユニット」の臨床・教育・研究を実践して行くには,精神科医のみらならず様々な方のご協力を必要としております.ご興味を持たれた方は,医師,心理士,看護師,薬剤師,基礎研究者を問わず,気楽にメールで,何時でも尾崎紀夫まで (ozaki-n@med.nagoya-u.ac.jp)御連絡ください.

基本方針:「現在の診断・治療法の検討」と「病因・病態解明による予防・治療法の開発」

研究内容

基本方針

「日々の臨床疑問の解決」とともに「病因・病態を解明し、病因・病態に即した診断・治療・予防法の開発」を目指す

1. 臨床研究:現在利用可能な精神医学的診断・評価法や薬物・心理社会的治療法の特性を明確化
 ・診断や評価を生物・心理・社会的側面から再検討した上で実行可能な治療法を選択
 ・対象疾患:統合失調症、気分障害、摂食障害、身体表現性障害、発達障害

2.疫学研究:ある疾患の発症頻度と発症に関与する因子を特定する
 ・診断において「どの疾患の可能性が高いか」
 ・二次予防(早期発見による早期治療)の際に高リスク群を同定
 ・一次予防(発症予防)のため、発症危険因子を同定
  ・具体例
   ・妊産婦のうつ病:心理社会的要因を加味したゲノムコホート研究
   ・産業衛生:うつ病の疫学的研究と早期発見の手法開発・介入研究
   ・歯科口腔外科患者・癌患者・移植患者・心不全患者に生じるうつ病・不安障害の疫学や治療法の研究

3.病態生理研究:病因・病態解明を目指した研究
 ・病因・病態に基づく疾患理解:患者・家族・一般へ→偏見の克服
 ・病因に基づく予防法と病態に基づく治療法
 ・病因・病態に基づく診断法・診断体系
 ・方法論:ゲノム(分子生物学)、認知科学(神経画像)、神経病理学的手法
 ・対象疾患:統合失調症、気分障害、摂食障害、発達障害、認知症

1) 頭頸部ガン患者の精神医学的側面に関する検討

頭頸部ガン患者は,うつ病の合併率,自殺率が高い点を考慮し,頭頸部ガン患者を対象に抑うつ・不安の発生率と,抑うつ・不安に関連する因子を検討して,早期発見・早期介入を目指しています.

2) 慢性心不全に併発するうつ病の発生率および関与する生物心理社会的因子の同定

心不全はうつ病の合併率が高く,うつ病合併は死亡率等の予後が悪いことが報告されています.そこで,慢性心不全患者を対象に,うつ病の発生率と,発生に関与する生物心理社会的因子を同定して,治療法の改善を目指しています.

3) 精神疾患,向精神薬,加齢が引きおこす運転技能・認知機能の変化を明確化

自動車の運転は,我が国で社会生活を実施する上で重要な要素です.しかし,運転技能に関わる中枢神経機能は明確化されず,精神疾患(認知症など)患者,向精神薬服用時には,自動車運転が規制されています.そこで,精神疾患,向精神薬,加齢か引きおこす運転技能・認知機能の変化を明確化し,職場復帰の支援・予測・交通事故防止,認知リハビリテーションの開発,さらに精神疾患患者・高齢者に優しい自動車開発への証左を得ることを目指しています.

4) 認知ゲノム手法を用いた神経性やせ症の病態解明

神経性やせ症は,死亡率も高く,慢性化する場合も多い,重篤な精神疾患です.しかし,その病態は不明で,有効な治療法もないのが現状です.神経性やせ症の特徴には,自己の身体像イメージが極端になっていることと,遺伝因子が関与していることがあげられます.以上に着目して,認知科学,ゲノム科学の手法を用いて病態を解明し,より良い治療法の開発を目指しています.

5) 妊産婦ゲノムコホート研究によるうつ病の遺伝環境相互作用の解明

うつ病の発症には遺伝因子と環境因子の両方が関与していますが,環境因子の関与が強く,遺伝環境相互の特定できるゲノムコホート研究が必須と考えられています.妊産婦にはうつ病の発症頻度が高く,母のQOL悪化のみならず,子供の養育・発達に影響を与えるとして,対応の重要性が強調されています.以上を踏まえ,妊産婦ゲノムムコホート研究を実施して,妊産婦のうつ病の実態と発症に関与する因子を明らかにし一次予防の対策を検討しています.また,子供の生物心理社会学的発達状態を確認して,母の妊娠・産後におけるうつ病が,児の発達に与える影響を明確化することを目指しています.

6) 網羅的発現解析法による統合失調症と双極性障害の診断に寄与する生物学的マーカーの探索

統合失調症や双極性障害は発症後,数年で病勢が進行すると考えられていますが,診断に有用な検査法がないため治療的介入が遅れ,その結果,難治化している症例が少なくないのが現状です.そこで,統合失調症や双極性障害の病態を特徴づける分子を,臨床上簡便に取得できる末梢血サンプルから網羅的発現解析法によって同定し,診断キット開発に着手しています.

7) 統合失調症・双極性障害の病因・病態解明

統合失調症・双極性障害は,ともに長期の治療が必要で,現在の治療法で十分な治療効果をあげることが出来ない精神疾患です.したがって,その病因・病態を解明して,真の予防法,治療法を開発することが求められています.我々は,ゲノム科学,神経科学の手法を用いて,両疾患の病因・病態を解明することを目指した研究をしています.

教員

構成員名/英名表記 役職 所属